検尿異常のない生体ドナーから持ち込まれた膜性腎症の推移

名古屋第二赤十字病院 腎臓病総合医療センター
* 堀家 敬司、武田 朝美、小野田 浩、坂井  薫、荻山 慶子、
北村  謙、後藤 憲彦、打田 和治、両角 國男

 レシピエントは39歳女性、今回が2回目の生体腎移植である。ドナーは39歳の夫で、移植前の検査では検尿異常なく感染症なく腎機能および腎形態も正常であった。レシピエントには抗ドナーHLA抗体陽性(CDC陰性、Flow PRA陽性、FCXM-B陽性)であり、移植術前に脾臓摘出術とDFPPによる抗体除去を行った。免疫抑制剤は、バシリキシマブ、シクロスポリン、プレドニソロン、シクロフォスファミドが使用された。
 手術中に施行された1時間生検の組織にて、stage2の膜性腎症を認めた。蛍光抗体法ではIgG>C3で係蹄にfine granularに陽性、C4dは糸球体係蹄には強くfine granular、PTCにはごく弱くlinearに陽性だった。移植後の経過は順調で、拒絶反応を経験することなく蛋白尿の出現なく術後3週間で退院となった。退院前のプロトコル生検では拒絶反応なくCNIの毒性所見なく、膜性腎症は1時間生検と同様の所見で蛍光抗体法でのC3の陽性度が減弱していた。検尿異常なく腎機能もCr=0.76mg/dlと維持されて、移植後6ヶ月目にプロトコル生検が施行された。糸球体係蹄の膜性変化は変わらず、蛍光抗体ではIgGは残存するがC3は係蹄からは消失していた。PTC-capillaritisと動脈の線維細胞性内膜肥厚(transplant vasculopathy)を認め、CAN-IBの所見を呈していた。
 持ち込まれた膜性腎症は6ヶ月の経過では光顕所見では変化がみられず、蛍光抗体法ではC3沈着が消失した。本症例では抗ドナー抗体弱陽性関連と考えられるが、6ヶ月プロトコル生検で免疫学的な慢性拒絶反応の像をみた。
 ドナーは腎機能障害の進行なく蛋白尿の出現も認めていない。


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