Patchy tubular injuryは急性拒絶反応時の移植腎機能障害の指標となりうるか?

東京慈恵会医科大学青戸病院 病理部
* 金綱 友木子
東京女子医科大学腎臓総合医療センター
堀田  茂
東京女子医科大学 泌尿器科
田辺 一成、土岐 大介
東京女子医科大学 腎臓外科
寺岡  慧
東京女子医科大学腎臓総合医療センター 小児科
服部 元史
東京慈恵会医科大学 柏病院病理
山口  裕

 移植腎の近位尿細管にはしばしばtubulitisを伴わない上皮壊死ないし再生像が、限局性に集簇、散在することがある。この所見は献腎移植に頻発する急性尿細管壊死(ATN)とは異なり、移植後ATNの病歴の無い生体腎移植組織にも出現しうる。そこで我々はこの所見が何らかの独立した臨床的意義を示していると推測し、patchy tubular injury(PTI)と呼称した。その上で PTIと急性拒絶反応との関連性を検討した。
 2000年4月から2007年4月までに施行された3531件の移植腎生検のうち221生検(6.26%)がPTIと診断された。このうち62症例78生検が、急性拒絶反応(AR)を合併した生体腎移植例であった。尚、これら62症例に対しては全体で延べ232件の生検が施行されていた。PTIの組織学的重症度は、grade 1:障害尿細管断面5ヶ未満、grade 2:5〜9ヶ、grade 3:10ヶ以上とした。AR合併PTI生検の内訳は血管型拒絶反応ないし既往あるもの(VR)15例23生検(v0: 4例、v1: 10例、v2 3: 9例)、尿細管間質型拒絶反応(TIR)25例32生検(t1: 7例、t2: 19例、t3: 6例)、液性拒絶反応(AMR)22例23生検(g0: 6例、g1: 16例、g2 3: 1例)であった。PTI scoreの平均はVR群1.91±0.17(mean±SEM)、TIR群1.58±0.10、AMR群1.15±0.08で、VR例にてPTI所見がより重症となる傾向が認められた。
平均血清クレアチニン(sCr)値はVR群2.76±1.44、TIR群2.43±1.3、AMR群2.2±0.9であった。VR群にてはPTIの重症度とsCr値の間には相関する傾向が見られたが、PTI scoreとt score, g scoreの間に相関は認められなかった。
追生検では拒絶所見の改善と共にPTIも改善したが、時にPTI所見のみ遷延する症例も認められた。これよりPTIはVR症例で重症化する傾向があり、急性拒絶反応の重症度の指標となりうることが示唆された。

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