術後36日で高度の抗体関連血管型急性拒絶反応の像を示したABO不適合移植腎の1症例

三井記念病院 病理部
* 藤井 晶子
東京女子医科大学腎センター 泌尿器科
土岐 大介
東京女子医科大学腎センター 腎臓外科
三宮 彰仁、渕之上 昌平、寺岡  慧
慈恵会医科大学柏病院 病理部
山口  裕

 44歳男性。31歳時にIgA腎症と診断され39歳で慢性腎不全となり透析導入。41歳の妻からABO不適合の生体腎移植を行った。術前のflow panel reactive antibodyはclass I, IIともに陰性。術前抗A抗体価は16倍であった。免疫抑制剤としてCyA、MMF, MPが用いられた。移植後、臨床的に拒絶反応が疑われ、ステロイドパルス療法とDSG投与を行った。その後、術後18日目の移植腎生検で軽度のinfi ltrative vasculopathyを認めた(v1,g2, ptc1, TMA,PTC+)。Cr2.26mg/dl。DFPP, PEXを行った。軽-中等度のtoxic tubulopathyも認めたため免疫抑制剤をCyAからFKに変更。術後36日目に2回目の移植腎生検施行。Cr3.73mg/dl。組織学的に小葉間動脈に高度のフィブリノイド壊死を伴う抗体関連血管型拒絶反応を認めた(v3, g2, ptc2, TMA, PTC+)。ステロイドパルス療法を施行し、OKT-3を10日間投与した。その後尿中からBKポリオーマウイルスが検出されFKを一時中止。γ-グロブリン投与を行った。術後55日の移植腎生検では免疫組織化学的にSV40陰性であったが、血管内腔の狭窄、フィブリノイド壊死を伴う高度の血管型拒絶反応を認めた(v3, cv2, g1, cg2, ptc1, TMA, PTC+)。Cr7.09。
 組織学的に、移植腎生検における急性血管型拒絶反応の像は、免疫抑制剤によるarteriopathyとの鑑別が時として問題になる。今回は典型的な抗体関連血管型拒絶反応の組織像を認めたのでこれを提示する。


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