移植腎への形質細胞浸潤を考える

名古屋第二赤十字病院 腎臓内科
* 武田 朝美

 移植腎病理診断を行うにあたって浸潤している細胞の種類に目を向けることは病態解明に重要ではあるが、その意義付けは困難なことが多い。
 移植腎生検組織への形質細胞の優位な浸潤をみることはしばしば経験するものである。移植後期に出現するPlasma cell rich acute rejectionが予後不良であることや、plasmacytoma-like posttransplant lymphoproliferative disease(PTLD)やウイルス感染症との関連などが検討されてきている。
 当施設で経験した移植腎生検において形質細胞の優位な浸潤を認めた症例を提示し、病態解明への方策を探ってみたい。
症例1(06191):ABO血液型不適合夫婦間移植後6か月目で腎機能悪化(sCr=1.6mg/dl→2.0mg/dl)を認めてエピソード生検を施行した。高度な間質細胞浸潤と尿細管炎を認めAcute rejection IBと診断したが、浸潤細胞はリンパ球に加えて形質細胞がかなり目立った(>50%)。EBV-ISH negative, SV40 negativeであった。
症例2(07033):原疾患が糖尿病性腎症であるレシピエントへの夫婦間移植で、移植後6か月プロトコル生検を施行した。移植腎機能は緩徐に上昇を認めていた(生検時のsCr=2.15mg/dl)。免疫抑制剤はシクロスポリン、プレドニゾロン、MMFが使用されていた。ごく軽度な尿細管炎はみるものの間質へ集簇する浸潤細胞はほとんどが形質細胞であった。形質細胞はほぼ全てがκ(+)細胞でありmonoclonalityが疑われた。

戻 る  ページの先頭