|
症例は42歳女性。19歳時にIgA腎炎を発症し経過観察されていたが、第一子出産後(30歳)腎機能低下を認め、同年人工透析導入となった。31歳時、実母をドナーとする生体腎移植を施行された。移植後11年時(42歳)に、右頚部リンパ節腫大を認め、生検にてびまん性大細胞型Bリンパ腫と診断された。Rituxymab CHOP療法が計3クール施行されたが、リンパ腫は増大傾向を示した。2クール目開始後、38度を超える発熱が持続し、血中のEBVコピー数の高度上昇が確認された。3クール目終了後、CHOP療法は無効と判断され頚部放射線照射が施行されたが、発熱および頚部リンパ節増大が持続し、DIC、腎機能低下が進行しリンパ腫発症後4 ヶ月にて永眠された。剖検時、右頚部および胸壁の真皮、皮下組織にリンパ腫の進展が見られ、右頚部の病変は広範に壊死に陥っていた。全身所臓器の高度うっ血および菌血症を示唆する所見が認められた。移植腎には、DICに伴う糸球体毛細血管内微小血栓・菌塞栓および免疫抑制剤によると考えられる高度の細動脈硝子様硬化病変が認められたが、明らかな慢性拒絶の所見は認められなかった。
PTLDは移植後の免疫不全状態において発症する主にB細胞性のリンパ増殖性疾患である。一般にPTLDの発症にはEBウイルスが深く関与していることが知られており、その発生機序は免疫抑制剤による細胞障害性T細胞の機能障害が初期免疫反応を抑制しEBウイルス感染B細胞が腫瘍性に増殖することによるといわれている。しかし、EBV関連PTLDは移植後6 ヶ月から1年以内に発生する頻度が高いとされ、本症例のように移植後11年を経過してEBV関連PTLDが発症する例は稀であると考えられる。一方EBV非関連PTLDは移植後2年以降に発症しmonoclonalな増殖を示す事が多いといわれている。PTLDのetiologyや移植免疫、EBVの関与等について討論したく、本症例を提示した。 |