Subclinicalな経過を呈した治療抵抗性B細胞浸潤型細胞性拒絶反応の一例

東京女子医科大学 泌尿器科
* 土岐 大介、石田 英樹、清水 朋一、田邉 一成
慈恵会医科大学柏病院 病理部
山口  裕、山本  泉
戸田中央総合病院 泌尿器科
徳本 直彦
東京女子医科大学腎センター 病理検査室
堀田  茂

 症例は59歳、男性。原疾患IgA腎症にて2005年7月、血液透析導入。同年12月22日、中国にて献腎移植を施行した。
2006年1月12日、当院受診。受診時の血清クレアチニン0.98mg/dl、蛋白尿は認めなかった。2月2日(第42病日)、プロトコール生検施行(1回目)。結果は軽度の細胞性拒絶反応(バンフ分類:borderline)だったため、経過観察となった。6月19日(第179病日)、3 ヶ月目のプロトコール生検施行(2回目)(血清クレアチニン:0.9mg/dl)。巣状結節状に炎症性細胞浸潤を認める細胞性拒絶反応(バンフ分類:1B)、peritubular capillaritis, severeと診断されたため、ステロイドパルス療法を施行した。8月10日(第231病日)治療効果判定のための3回目の腎生検施行(血清クレアチニン:0.92mg/dl)したが、引き続き強い尿細管間質型拒絶反応(バンフ1B)とperitubular capillaritisを認めた。結節状に浸潤する炎症細胞は、免疫染色を施行した結果、B細胞(CD20陽性細胞)主体であった。ステロイド抵抗性の拒絶反応と判断し、スパニジン5mg/kg/day、5日間を2コース(計10日間)投与した。12月7日(第350病日)4回目の生検を施行。慢性拒絶反応を伴う移植腎腎症(バンフ分類:CAN with CR)と遷延する細胞性拒絶反応(バンフ分類:1A)を認めた。3回目の生検が治療抵抗性、予後不良なB細胞浸潤型細胞性拒絶反応であり、4回目の生検で慢性拒絶反応に進行していたため、2007年1月5日、リツキサン200mg/bodyの投与を行った。リツキサン投与後の5回目の生検ではCRの所見が認められず、また細胞性拒絶反応もボーダーラインまで改善を認めた。現在、血清クレアチニン0.91mg/dlを維持し蛋白尿も認めていない。
 B細胞浸潤性の細胞性拒絶反応は一般に治療抵抗性で予後不良であるといわれている。ステロイド抵抗性を示すため、リツキサンの投与などが試みられており良好な結果が得られる場合もある。本症例は、B細胞浸潤型細胞性拒絶反応がsubclinicalに、また治療抵抗性に遷延し、リツキサンの投与が有用であった一例であった。


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