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症例は40歳男性。慢性糸球体腎炎由来の慢性腎不全にて腹膜透析と血液透析の併用療法を行い、2006年6月28日に実父(69歳)をドナーとする生体腎移植を施行した。翌日、尿管吻合部狭窄による水腎症が判明し再手術となったが、術後20日目にはbest Cr1.9mg/dlまで改善した。しかし、蛋白尿が出現するとともに高血圧も持続し、術後25日目には蛋白尿3.5g/日、血圧200/100mmHgとなった。再発性腎炎も考えられたが身体所見より体液過剰に伴う過剰濾過が原因と考え、まず体液量是正とロサルタン50mgを追加したところ、術後42日目には血圧120/80mmHg前後にコントロールされ、尿蛋白も0.4g/日まで減少した。しかし、Cr2.7mg/dlと急激な増悪を認めたため術後47日目に腎生検を施行したところ、極一部に尿細管炎に類似した所見を認めた。軽微な所見ではあったが急性拒絶反応を考慮し、ステロイドパルス療法を施行したところCr2.0mg/dlまで低下した。しかし、その1週間後には再び腎機能の増悪を認めた。ドナーの腎機能はCr0.9mg/dl, Ccr138ml/minであったが、高血圧で加療中であり0hrの腎生検所見で著明な動脈硬化性変化を認めていた。47日目の腎生検所見では糸球体の虚脱、尿細管の萎縮、変性の所見が著しいことから、レシピエントにとっての至適血圧では十分な移植腎血流が得られずGFRが低下したものと推察した。その後、降圧剤の減量を行い血圧140/90まで徐々に上昇させたところ、Cr1.6mg/dlまで改善し現在も良好に経過している。本例の臨床経過を踏まえ、病理組織的所見をいかに評価すべきであったかご検討頂きたい。 |