既存抗体陽性レシピエントに生じた超急性拒絶反応に対し治療が奏功した一例

東京女子医科大学 腎臓外科
* 頓所  展、三宮 彰仁、富田 祐介、今泉 理枝、添野 真嗣、
小川 勇一、白井 博之、矢嶋  淳、小山 一郎、唐仁原 全、
中島 一朗、渕之上 昌平、寺岡  慧
聖マリアンナ医科大学 病理学
小池 淳樹
東京慈恵会医科大学附属柏病院 病理部
山口  裕

【症例】67歳女性
【現病歴】糖尿病性腎不全により透析導入となり透析歴は12ヵ月。今回、35歳の娘をドナーとした生体腎移植を施行した。
【既往歴】輸血歴あり。妊娠歴5回。移植歴なし。脳梗塞の既往あり。
【適合性】血液型:O(+)→A(+)minormismatch.HLA:1-haplotype identical。
【術前検査】CDC:T cell(-)、B-warm40%、-cold60%。FCXM:T cell(-)、B-cell(-)。flow-PRA:class I 83%、class II 64%。
【免疫抑制療法】CYA/MMF/BAS/MPで導入。
【手術】右腸骨窩腎移植術。血流再開13分後に初尿を確認し、術中のグラフト色調は良好だった。
【術後経過】血流再開2時間後、尿量が30ml/hrと減少傾向を示し、エコー上、移植腎血流不良であった。再開創にて第一回目の移植腎生検(血流再開9時間後:写真1、2)。病理組織にてHARと診断。Steroid pulse、血漿交換、抗凝固療法を開始した。またPOD7にCDC,FCXMでT/B cell 陽性、flow-PRA陽性となったことからrituximab投与、low-dose IVIGを施行。POD11第二回目移植腎生検を施行した。POD40から利尿を認めた。POD49第三回目移植腎生検を施行した。病理組織学的にAMR残存を認めるものの改善傾向にあった(写真3)。移植腎機能安定しPOD58透析離脱した。POD85、Cr0.99mg/dlと移植腎機能良好で退院した。POD258、尿路感染にて入院した際に移植腎生検を行った。
【まとめ】既存抗体陽性レシピエントに生じた超急性拒絶反応を経験した。急性期は治療し得たがグラフト長期予後については楽観できない状況にある。以上POD0/11/49/258における組織像を検討する。


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