急性抗体関連型拒絶の臨床病理学的検討
− ABO不適合と抗HLA抗体陽性例での比較検討−

北海道大学大学院医学研究科 腎泌尿器外科
* 下田 直彦、堀田記世彦、岩見 大基、森田  研、野々村克也
市立札幌病院 泌尿器科
三浦 正義
北海道大学大学院医学研究科 病理部
久保田佳奈子、伊藤 智雄
市立釧路病院 泌尿器科
渡井 至彦

【目的】ABO不適合と抗HLA抗体陽性例での急性抗体関連型拒絶(AAMR)の臨床病理像の違いを検討した。
【方法】ABO不適合移植2例と抗HLA抗体陽性移植2例で発症したAAMRの臨床像、病理像を比較検討した。
病理像はBanff分類及びPTCi(傍尿細管毛細管炎: 0-3)とPTCbm(傍尿細管毛細管基底膜肥厚: 0-3)、パラフィン切片でのC4d染色(PTC、糸球体係蹄)を検討した。免疫抑制はABO不適合では術前血漿交換とバジリキシマブ、タクロリムス、MMF、ステロイドの4剤を用い、抗HLA抗体陽性例では術前リツキシマブ投与と血漿交換、そして前記の4剤を投与した。抗HLA抗体はflowPRA法で測定した。
【結果】
(臨床経過)ABO不適合2例では、移植後11、12日目にsCrの有意な上昇、抗A抗体価の急増(64倍−256倍、8倍−32倍)、腎エコー上腎末梢血管抵抗の増大、尿中FDPの増加からAAMRを疑い移植腎生検を施行した。
血漿交換、ステロイドパルスを施行して一度改善したが、それぞれ26、30日目に再度sCr上昇、抗A抗体価の上昇を認め、再度前記治療を行い寛解した。抗HLA抗体陽性2例では、それぞれ移植後3日目、7日目にsCrの有意な上昇、抗ドナー抗体の増加、腎末梢血管抵抗の増大、尿中FDPの増加からAAMRを疑い移植腎生検を施行した。ステロイドパルス、継続的な血漿交換を行い、移植後40、70日目頃に臨床的に寛解した。
(病理像)C4d染色は、ABO不適合ではPTC、糸球体係蹄ともにびまん性に陽性であった。一方で、抗HLA抗体例では一例でPTC、糸球体係蹄にC4dは陰性で、この症例では病理学的にはAMRと診断し得なかった。他一例ではPTCでC4dは陰性〜 focalで、糸球体係蹄でびまん性に陽性であった。糸球体炎(g)はABO不適合ではほぼg0であったのに対し、抗HLA抗体例ではg1-2であった。PTCiはABO不適合ではPTCi0であったのに対し、抗HLA抗体例ではPTCi1-2であった。
【結論】病理学的に診断し得たAAMRにおいて、ABO不適合でPTCi、糸球体炎は目立たず、C4dが陽性であったが、抗HLA抗体例ではPTCi、糸球体炎が目立ち、C4d染色性は弱かった。いずれも抗拒絶療法にて寛解した。


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