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【背景】電顕による傍尿細管毛細血管(PTC)基底膜多層化は、移植腎慢性拒絶反応に特異的な所見として認識されてきている。前回我々は、PTC基底膜多層化病変を認める症例では、光顕上もPTC基底膜の肥厚が見られることに着目し、光顕による後期移植腎のPTC病変評価の指標を“ptcbm score”として提案した。今回、同スコアが電顕における基底膜多層化を真に反映するものであるか、また慢性拒絶の病理組織診断に有用であるかを検討するため、電顕と光顕所見の比較検討を行った。 【方法】前回用いた移植後1年以上の後期移植腎52例中、電顕検索が可能であった48例を対象とした。48例を、1群(CAN with CR, m=24)、2群(CAN without CR, n=18)、3群(CAN-free, n=6)に分類し、ptcbm scoreの値と電顕写真計測による基底膜多層化病変の実測値を群間で比較した。また群分けとは無関係に、各症例においてptcbm scoreと基底膜肥厚の相関を検討した。ptcbm scoreは0-3の4段階で評価した。
【結果】光顕での基底膜肥厚gradeの平均は1群1.78、2群1.20、3群0.33 で、1群-2群間に有意差が認められた(P<0.001)。電顕では、基底膜厚の平均は1群495nm、2219nm、3群179nmで1群-2群間に有意差が認められた(P<0.001)。光顕でのptcbm scoreと電顕での多層化厚には正の相関が認められた(rs=0.73,P<0.01)。 【考察】以上から、光顕によるPTC基底膜肥厚の評価は多層化病変の評価として適当であり、光顕にて慢性拒絶の評価に有用と考えられ、そのcut off pointは、TBMよりも肥厚しているptcbm2が妥当であると考えられた。 |