生体腎移植後10ヶ月目より蛋白尿を呈した1型糖尿病

東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科
* 山本  泉、山本 裕康
東京慈恵会医科大学附属柏病院 病理部
山口  裕

 症例は37歳男性。23歳時にTypeI糖尿病と診断された。その後の食事・運動療法やインスリンのコンプライアンスは不良であり、HbA1C10%前後にて経過していた。2000年ごろより徐々に血清Crが上昇し、2003年1月28日に血液透析導入となった。2003年11月26日に免疫抑制療法としてTacrolimus+MMF+Methylprednisone+Basiliximabのプロトコールを用いて、母親をドナーとする生体腎移植を施行した。術後8日目より血清Crの上昇と、尿量の低下を認め、急性拒絶反応と考え、Methylprednisone 500mg×3日間を施行した。ステロイド加療後、血清Crの低下と尿量の増加を認め、1月10日に退院となった。退院後5日目にサイトメガロウイルス肺炎にて再入院となった。ガンシクロビル+γグロブリン投与により肺炎の改善を認めた。この際血清Crの上昇を認めたが、経過観察にて自然軽快した 。サイトメガロ抗原も陰性化し、CMVIgG陽性となったため、3月4日に退院となった。以降外来にて経過観察としていたが、HbA1C8%前後と血糖コントロールは不良であった。2004年8月頃より尿蛋白を認めるようになり、2004年12月21日にはUN12mg/dlm、Cr1.2mg/dl、Ccr66ml/minと腎機能は保たれているものの、尿蛋白2.3g/dayにまで上昇した。糖尿病性腎症の再発が疑われ、2005年1月18日再度腎生検を施行したところ、糖尿病性腎症の所見は認めず、一部の糸球体に上皮細胞の腫大、変性を伴う巣状糸球体硬化症の早期病変を認めた。現在Tacrolimus 2mg/day+MMF 1000mg/day+Methylprednisone 4mg隔日投与としているが、今後の治療方針決定のため、尿蛋白と早期巣状糸球体硬化症の原因について検討して頂きたい。


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